お知らせ

失神とは

失神とは@意識消失があり A一過性で B急激に発症し、C短時間で D自然に完全に回復すること、と定義されます。原因は脳全体の一過性の血液の灌流低下と考えられています。失神は反射性(神経調整性)失神、心臓が原因でおこる心原性(心血管性)失神や原因が検査しても見つからない原因不明の失神などがあります。

心原性失神は予後が良好でない事が多く、不整脈などを念頭において原因精査を徹底的に行う必要があります。失神の中で最も頻度の高いものが反射性失神で今回は左記について説明します。

  1. 血管迷走神経性失神(VVS)
    反射性失神の中で最も頻度が高く、女性にやや多くまた幅広い年齢層で出現します。
    長時間の立位や水分不足時に発症しやすく疼痛やアルコール、ストレスや薬物摂取などが誘因となりやすいとされています。胸部不快感や吐き気、冷汗などの前駆症状を伴う事が多いです。失神時の状況からVVSを強く疑うことはできますが、診断確定のために検査を行うこともあります。治療は非薬物治療が重要で、生活指導として長時間の立位の回避や塩分・水分の摂取を充分行うことが大事です。またアルコールの多飲やストレスなどの誘因を避けるようにします。失神回避法も重要で、前駆症状を自覚した場合には、その場でしゃがみ込んだり臥位になることや、立位のまま足を動かしたり、足を交差させる、あるいは両腕を組んで引っ張り合うなどの動作によって失神を回避できる事が多いです。またチルトトレーニングといって足の踵を壁から15〜20cm離して壁に寄り掛かり、下半身を動かさずに身体を保持するという動作で、毎日1回続ける事によって起立時間を延長できるようになり失神の回避に有効とされています。これらの非薬物療法によっても失神が予防できない場合は、薬物療法や場合によってはペースメーカーの治療が必要という事もあります。この場合は我々医師が説明します。
  2. 状況失神
    これは以下にあげる特定の状況下で徐脈や血圧の低下を来し出現します。
    1. @排尿失神・・・中高年の男性に多く、立位の排尿で起こしやすく飲酒後に出現する事が多いです。
    2. A排便失神・・・比較的高齢の女性に多く、腹痛などの消化器症状を伴いやすい
    3. B咳嗽失神・・・中年の比較的肥満の男性に多くCOPDの合併も多く、自律神経の反射の異常に起因する事が多い
    4. C嚥下性失神・・・比較的まれですが、Bと同じように嚥下時の自律神経の反射の異常とされています。
    これらは坐位での排尿、腹痛予防、飲酒などの誘因の除去などの生活指導で失神の予防ができることが多いとされています。
  3. 頸動脈洞症候群
    着替え、運転、荷物の上げ下ろしなどの頭部の回旋・伸展やネクタイなどによる頸部の圧迫で頸部にある圧力を感じる部位が刺激され失神が誘発されます。医師による診断がおこなわれます。治療は急激な頭部の回旋・伸展の回避やネクタイなどによる頸部圧迫の回避などの生活指導が中心となります。まれにペースメーカーによる治療を必要とする事もあります。

この他にも自律神経の失神には起立性低血圧や体位性起立頻脈症候群などがありますが長くなるので割愛します。これらによる失神が気になる方はご相談下さい。

お知らせの一覧を見る