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循環器疾患に対する運動療法

運動療法は、循環器疾患において危険因子の改善を介する発症予防だけでなく、再発の予防、生命予後の改善、生活の質(QOL)の改善などその有用性が示されています。動脈硬化症疾患における危険因子の改善は運動療法の重要な目的の1つです。
たとえば@メタボではウエスト周囲長の減少、収縮期・拡張期血圧の減少さらにHDLコレステロールの増加、A糖尿病ではHbA1c、内臓脂肪面積、中性脂肪の低下、B冠動脈疾患では総コレステロール、中性脂肪の減少に効果があるとそれぞれ報告されており、動脈硬化性疾患の一次予防と二次予防において危険因子の改善に効果があるとされています。
循環器疾患発症後、たとえば心筋梗塞後の治療としての運動療法は心筋梗塞の再発を減少させ、心血管が原因となる死亡を20〜25%減少させます。また慢性心不全に対する運動療法では、上記などが原因でおこる心不全では死亡のリスクを46%減少させたとの報告もあります。
このため上記などに対する運動療法(心臓リハビリテーション)により身体の機能、心理的また社会的機能などQOLに関係するすべての指標が改善したと報告されています。
実際の運動療法としては、健康診断などの結果が基準範囲内にある方は、18〜64歳では、3メッツ以上の強度の身体活動(歩行またはそれと同等以上)を毎日60分、3メッツ以上の強度の運動(息が弾み汗をかく程度)を毎週60分行うことが勧められています。65歳以上では強度を問わず身体活動を毎日40分行うことが推奨され、また世代を超えた目標として今より少しでも身体活動を増やすこと(たとえば10分でも多く歩く)が推奨されています。
高血圧、糖尿病、肥満症などの生活習慣病をお持ちの方は、強度が3〜6メッツの運動を10メッツ・時/週行うこと。具体的には歩行またはそれと同等できついと感じない程度の運動(中等度の有酸素運動といいます)を1回30〜60分、毎週3回以上行うことが望ましいとされています。その際運動だけでなく栄養・食生活の改善も合わせて行うことが重要です。

循環器疾患(特に心筋梗塞後など)の運動療法(リハビリテーション)においては、急性期においては主として病院でおこなわれます。したがって社会復帰後の運動療法を説明します。
社会復帰後は禁煙、食事療法などを行いながら、病気の発症前の日常生活活動レベルを目標に個々人に合わせた運動療法を行います。運動強度は諸説ありますが、わかりやすい指標として@自覚的運動強度で「ややつらい」〜「その手前」のレベル、A安静時心拍数+30bpmなどを持ちいてきめればよいと考えます。(運動負荷試験をできればされた方がよいですが)運動時間と頻度に関しては10分×2回/日から開始し、20〜30分×2回/日まで徐々に増加し、安定期には30〜60分×2回/日を目指し、週3回以上、できれば毎日行うことがよいです。近年レジスタンス運動の有用性が注目されており、これは有酸素運動をどの程度行えるかを考慮した上で安全に行えば効果的です。
大血管の手術後の患者さんにおいては手術後の廃用症候群を予防し、社会復帰を目指すことを目的として、心不全患者さんとほぼ同様に運動療法(心臓リハビリテーション)を行い、それにより骨格筋や末梢血管などの運動に対する耐容能力を増加させ自覚症状の改善をもたらすことが示されています。

このように維持期(社会復帰後)の有酸素運動は心臓血管障害の再発を抑制し適切なレジスタンス運動を行うことで骨格筋量が増加することが知られています。
要は患者さんのQOLを高め、社会復帰を果たすために運動療法の重要性はますます高くなっているのです。高齢化をむかえ循環器疾患が急増するわが国においては運動療法の必要性は高まっており、かつ非常に大切です。上記を理解された上で、一見健康と思われている方も含め運動療法を行う事を強くお勧めします。

 

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