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高血圧治療において下の血圧(拡張期血圧)が低いのは?

冒頭に記したように高血圧症の患者さんから下の血圧が低いのはよいのかとしばしば質問されます。高血圧症自体あらゆる心臓・血管疾患のリスクであることは明確であり、的設なコントロールが重要であることはいうまでもありません。しかしながらそのコントロールに関しては高齢者特にフレイルを有したり認知機能の低下がある人などにおいては低すぎる血圧が総死亡(いろいろな原因による死亡)のリスクと関連するという、いわゆるJカーブ現象(高すぎても悪く、逆に低すぎても悪い事を意味するJ)が知られています。このJカーブ現象は拡張期血圧と臓器の血流の関係で考えられており、特に心臓などではそれが低いと心臓を流れる動脈の左力が低くなり、心臓に対して悪影響を与えるとされています。特に心臓・血管疾患の既応のある高齢者の人では低い拡張期血圧がその後のさらなる心臓・血管疾患の発症のリスクとなる事が最近報告されました。
これに関しては低い拡張期血圧は、全身状態の衰え(フレイル)を間接的に表している可能性があり低い拡張期血圧は高度に進行した動脈硬化(上と下の血圧の差が増加している)を表している可能性があること、さらに低い拡張期血圧は臓器を灌流する圧力の低下につながっている可能性があることなどが考えられています。また拡張期血圧と心臓・血管疾患のJカーブ現象は、高血圧で治療中の人に認められたとの報告もあります。これらの事を勘案すれば、高血圧で治療されている人の年令病態などは多様であり、それらの人の個々の背景や併存する疾患を考える必要があります。すなわち拡張期血圧が低くても問題のない(その人の臓器に対して)人もいれば低すぎると問題がおこる可能性のある人もおり、各々の人に対する個別な治療が必要と考えられます。したがって拡張期血圧の高低の是非は個々の人で違い、診療時説明しますという事になります。

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