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潜在性鉄欠乏症とは

前回は鉄欠乏性貧血について説明しました。それに関連して今回は潜在性鉄欠乏症について説明します。潜在性鉄欠乏症とは、貧血はないが貯蔵鉄が不足した病態です。体内に含まれる鉄は赤血球内のヘモグロビンに含まれるヘム鉄と肝臓・筋肉などに貯蔵される貯蔵鉄に大別され、その貯蔵鉄が不足した病態なのです。
鉄欠乏性貧血は日本人女性全体では約1割、月経のある女性では約2割いることは前回記載しましたが、潜在性鉄欠乏症はさらに上記の2倍いると推測されています。つまり月経のある女性ではじつに約4割いることになります。ちなみに男性では5%に満ちません。
貧血がなくても潜在性鉄欠乏症があると、全身けんたい感やうつ症状、パニック障害などを起こすことがあり、鉄を補うことでこれらの症状は改善するのです。しかし上述の症状が本人も医療者も潜在性鉄欠乏と認識していることはまれなのです。前述した貯蔵鉄の量は血液中のフェリチンによって推測できますが、フェリチンが15mg/ml以下になると潜在性鉄欠乏症と診断します。そしてこの場合には上述の全身けんたい感だけでなく女性の不定悠訴と考えられる症状が出現してきます。鉄は筋肉に存在するミオグロビンというものの成分になるため、鉄欠乏があると筋力低下や疲労感が生じるのです。また鉄欠乏により前回に記載した月経のある年代の女性の不定愁訴と思われる症状の多くがその原因として説明できる可能性があります。ある本による報告では15〜50歳女性のうつ・パニック症状の約80%は鉄・蛋白の不足が原因であり、その摂取で症状が劇的に改善したとのことです。したがってこれらの症状が出現した場合、鉄・フェリチンを検査することも有効である可能性があります。したがって貧血はないが全身けんたい感など上述の症状が続く場合は潜在性鉄欠乏症を原因の一つとして考えることが大切です。
ご承知おき下さい。

 

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