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失神 その原因 予後は?

失神とは血圧低下による全脳虚血(脳全体の血流低下)であり、一過性の意識障害の半数以上を占めます。広義にいうと意識を失って転倒し、その後自然にすみやかに完全な意識の回復がみられる状態です。症状としては失神された人の多くは失神したといわれることはなく、気が遠くなった、倒れた、転んだ、目の前が暗くなった、めまいがしたなどと話されます。しかし失神された人は全脳虚血におちった後に転倒するために受け身がとれず頭部や顔面の外傷を合併することが20%以上の人にみられるとの報告があり上記などの外傷をおった人は失神の可能性を考える必要があります。失神は血圧低下による一過性全脳虚血であり、血圧低下の原因は@神経調節性(反射性)失神A心原性(心血管性)失神B起立性低血圧による失神に大別されます。@は迷走神経の緊張による血管迷走神経性失神が多くをしめます。長時間の立位または座位による同一姿勢の保持により悪心、頭重感、腹痛、眼前暗黒感などの前駆症状の後に持続時間の短い失神をおこすというのが典型的であり、誘因として不眠、疲労、恐怖などの肉体的・精神的なストレスなどがあります。激しい咳の後に生じる咳嗽失神、排尿、排便後に生じる排尿失神、排便失神、えり首のきついシャツの着用などによる首の圧迫で失神を生じる頸動脈洞過敏症候群なども@に含まれます。Aは徐脈や頻脈を生じる疾患(薬剤も含む)、弁膜症、心筋症、心筋梗塞、肺血栓塞栓、大動脈解離などの心臓が原因で生じる失神です。Aは生命予後は不良で、心臓突然死の前兆となりうるため検査を含め慎重な判断、治療が必要となります。Bは仰臥位から立位への体位の変換で3分以内に収縮期血圧が20mmHg(拡張期血圧10mmHg)低下するものです。失神にBが原因となるものに関しては循環血流量の減少による脱水、吐血、下血などの症状を伴わない消化管出血よる失神も含まれます。またアナフィラキシーによる過度の血管拡張、飲酒後の失神(アルコールあるいはその分解産物であるアセトアルデヒドによる血管拡張による)も含まれます。さらに狭心症の人が初めて舌下錠を使用した場合、初めての降圧薬の服用、利尿薬や抗うつ薬の服用後にみられる薬剤誘発性失神という病態もBのはんちゅうに含まれます。失神の診断検査には心電図、血液検査を必須(前者)あるいは必要に応じて(後者)おこない、頭頸部の外傷を伴う場合には頭部CT検査、てんかん発作の鑑別を要する場合には脳波検査、そして立位負荷試験(3〜10分間立位姿勢をとっていただき、この間の血圧、脈拍数を測定する)などをおこないます。失神の診断は病歴を聴取したり来院時の身体の診療を我々医師がすることで多くの場合おこなえますが、失神類似の病態も10%程度あるため、その見落としをしないことが重要なのです。失神の治療は病態により行動の是正をしていただくことのみによるものから、入院を含め慎重な対応をとらせていただくものまであります。入院の適応は心原性失神が疑われ経過観察が必要とされた場合、原因が器質的疾患である場合、症状の悪化により立位を保持することが困難などの場合です。帰宅が可能な人は再発防止や外傷予防の指導をうけられることが大切です。たとえば神経調節性失神の場合、転倒による外傷防止のため前駆症状を感じたら臥床するかうずくまるあるいは血圧を上昇させるある種の動作をおこなう、車の運転や高所での作業は注意するなどです。
失神には今回記したように生命予後の良好なものからそうでないものまであります。したがって失神をおこされた人はまず医師の診察をお勧めします。

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